主な実験装置
過熱水蒸気処理実験システム研究概要(食品工学会研究室紹介文より)
水蒸気は,18世紀にイギリスで始まった産業革命以後,熱エネルギーから運動エネルギーあるいは電気エネルギーを作り出すための熱媒体として利用されてきました.機械工学における熱力学は,このような,いわゆる「エネルギー変換」に水蒸気を利用する技術を支えてきた基礎工学分野といっても過言ではありません.機械物理系に属する私たちの研究室では,さらにユニークな水蒸気の利用技術として,(1)乾燥,食品加工,廃棄物処理への大気圧近傍の過熱水蒸気の利用について研究しています.高温高圧の過熱水蒸気は発電所など「エネルギー変換」の分野では古くから利用されてきましたが,大気圧近傍の過熱水蒸気の利用研究はほとんど行われてきませんでした.本研究室は,過熱水蒸気を乾燥熱風として利用する過熱水蒸気乾燥法に注目し,すでに30年以上前に,空気乾燥と比較したときに,ある温度(逆転点温度)以上で過熱水蒸気乾燥での蒸発速度の方が速くなる現象をはじめて指摘した歴史があります.近年は,工場の省エネルギー化や安全性向上のみならず,製品の高機能化・高付加価値を目指して,化学製品の乾燥や,食品加工,廃棄物処理を中心に技術開発ならびに基礎研究を行っています.特に,処理初期に起きる水蒸気の材料表面への凝縮と凝縮水が再蒸発する一連の非定常相変化現象を「反転過程」としてモデル化し,その制御手法の開発と,処理物に与える効果について研究を進めています.つぎに,減圧下での水蒸気の凝縮現象に関連して,(2)水の相変化を利用した熱駆動型の吸収冷凍機の吸収器で生じる,低圧下での冷媒蒸気の凝縮・吸収現象の解明と,界面活性剤を用いた吸収促進方法などに取り組んでいます.さらにこれらの複合的な研究テーマとして,エネルギーシステムの省エネルギー化を目指して,(3)一般家庭,食品工場や業務用ビル,さらには都市規模の快適性や物質循環を配慮した,コジェネレーションシステムの構築や自然エネルギーを最大限に利用する方法について,「エコジェネレーション」あるいは「環境熱工学」を提唱し,その実現に向けて研究を進めています.最後の大きなテーマとして,(4)熱と物質移動の基礎研究や,さまざまな装置の効率改善法や開発を目的として,レーザーホログラフィー干渉法による高速可視化計測システムなど,非接触で温度や濃度の測定が可能なレーザー光を利用した計測手法の開発とその応用についての研究も行っています.